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その他 2026.09.11

ニトリル手袋の食品衛生法適合とは

ニトリル手袋の食品衛生法適合とは。発注担当者が確かめる書類と相見積もりの落とし穴

使い捨て手袋を仕入れようとして、カタログを並べたところだとします。

どの箱にも「食品衛生法適合」と書いてあります。値段は3割ちがいます。厚さはどれも0.08ミリと書いてあります。それなら安いほうでいいのか、と手が止まる。この記事は、そこで止まった方に向けて書いています。

先に結論をお伝えします。箱に印刷された「食品衛生法適合」という文字は、国が審査して与えた表示ではありません。 製造元または輸入販売元が、自分の責任で書いているものです。だから、同じ言葉が書かれた2つの製品が、まったく違う根拠に立っていることが起こります。

では発注する側は何を見れば確かめられるのか。この記事では、法律が実際に求めている試験から始めて、根拠になる書類、書類のどこを読むか、発注量の決め方、相見積もりを比べられる形に持ち込む手順、仕入先を切り替えるときの注意点、そして厚さとサイズの決め方まで、順番に整理します。長くなるので、目次から必要なところへ飛んでいただいても構いません。

「食品衛生法適合」と箱に書いてあれば、それで確かめたことになるのか

多くの現場で、手袋の選定はこの一文で終わっています。

無理もない話です。消耗品の発注は、担当者ひとりが何十種類も抱えている仕事です。手袋だけに時間をかけられる方のほうが少ないでしょう。表示があれば足りる、という運用は、そこから生まれます。

ところが、この表示には落とし穴があります。

国が審査していない。

「食品衛生法適合」という表示に、届出も許認可も存在しません。製造元または輸入販売元が「うちの製品は基準を満たしています」と主張している、自主的な宣言です。

根拠がずれることがある。

同じ「適合」でも、第三者の試験機関が発行した成績書を持っている製品と、社内の判断だけで書いている製品が、市場に並びます。箱の見た目は、どちらも同じです。

品番ごとに違うことがある。

同じブランドの手袋でも、青は試験を受けていて黒は受けていない、ということが起こります。色違いは別の配合だからです。

そして、この差が表に出るのは、たいてい何かが起きたあとです。取引先の監査で書類を求められたとき。製品への異物混入が見つかったとき。そのときに「箱に書いてありました」では、説明が成り立ちません。

発注する側が確かめられる形にしておく。この記事が扱うのは、その手順です。

手袋は、法律のうえでは「器具」にあたる

まず、どの法律のどこに書かれているのかを押さえます。

食品に直接触れる手袋は、食品衛生法のうえで「器具」に分類されます。そして器具の規格は、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)という告示に定められています。

この告示の「器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格」には、こう書かれています。

> 器具は,銅若しくは鉛又はこれらの合金が削り取られるおそれのある構造であつてはならない。

つまり出発点は、器具そのものが食品を汚してはならない、という原則です。手袋の場合、削り取られる金属より問題になるのは、素材から溶け出す化学物質のほうです。そこで材質ごとに、溶け出す量を測る試験が定められています。

ここで確かめておきたいことが1つあります。告示は「ニトリル手袋の規格」という形では書かれていません。 「ゴム製の器具又は容器包装」「合成樹脂製の器具又は容器包装」という材質の区分で書かれています。

この区分が、後の章で効いてきます。ニトリルはゴムです。ポリエチレンや塩化ビニルは合成樹脂です。同じ使い捨て手袋でも、適用される条文がまるごと違います。

発注する側から見ると、確かめるべきことは2段階になります。

1段階目。

その手袋の材質は何か。ゴムか、合成樹脂か。

2段階目。

その材質に定められた試験を、その品番が通っているか。

材質を飛ばして「適合していますか」とだけ聞くと、答える側も曖昧に答えられてしまいます。

ゴム製の手袋に課されている試験は、多くて7つ

ニトリル手袋が通らなければならない試験を、告示の原文から整理します。告示第370号の「ゴム製の器具(ほ乳器具を除く。)又は容器包装」の項です。

試験は、素材そのものを調べる材質試験と、溶け出す量を調べる溶出試験に分かれます。

 

区分 試験項目 基準 何を確かめているか
材質試験 カドミウム及び鉛 試料1グラムあたり100マイクログラム以下 顔料や添加剤に由来して、素材そのものに含まれている量
材質試験 2-メルカプトイミダゾリン 添加剤試験法での判定に適合すること 加硫促進剤として使われる成分が、素材に残っていないか
溶出試験 フェノール 1ミリリットルあたり5マイクログラム以下 酸化防止剤が分解してできる物質の溶け出し
溶出試験 ホルムアルデヒド モノマー試験法での判定に適合すること 製造工程で使う薬剤が溶け出さないか
溶出試験 亜鉛 1ミリリットルあたり15マイクログラム以下 加硫剤や活性剤に由来する亜鉛の溶け出し
溶出試験 重金属 鉛として1ミリリットルあたり1マイクログラム以下 溶け出した重金属の合計
溶出試験 蒸発残留物 1ミリリットルあたり60マイクログラム以下 溶け出した成分の総量

 

上の2行目には、適用される範囲に条件が付いています。表には書ききれないので、ここで補います。

告示にはこう書かれています。

> 塩素を含まないゴム製のものについては,1.材質試験のbに示す2―メルカプトイミダゾリンの試験を除く。

同じ「ゴム製」でも、塩素を含むかどうかで受ける試験の数が変わる、ということです。したがって「ゴム製だから7項目すべてを受けている」とも限りません。 試験成績書を見て、どの項目が載っているかを数えるのが確実です。

もう1つ、蒸発残留物の欄を見てください。ゴム製は1ミリリットルあたり60マイクログラム以下です。合成樹脂製の一部では30マイクログラム以下と定められています。基準の厳しさは材質ごとに違います。「ゴムのほうが緩いから危ない」という話ではなく、素材の性質に合わせて別の物差しが当てられている、と理解してください。

ニトリルという素材だから適合している、とはならない

検索の候補に「ニトリル手袋は食品衛生法に適合していない?」という問いが並びます。この問いが出てくるのには、理由があります。

ニトリルゴムという素材そのものに、適合も不適合もありません。試験項目の表で見たとおり、告示が判定しているのは素材の名前ではありません。最終製品に何がどれだけ含まれ、そこから何がどれだけ溶け出すかです。同じニトリルを主原料にしていても、基準を超える製品はできてしまいます。

理由は3つあります。

配合。

ニトリルゴムに弾力と強さを持たせるため、製造の過程で酸化防止剤や加硫促進剤が加えられます。これらが反応しきらずに残ると、油や酸に触れたときに溶け出します。蒸発残留物やホルムアルデヒドの基準を超えるのは、この経路です。

着色剤。

食品の現場では、混入したときに見つけやすいよう青い手袋がよく使われます。ところが安価な顔料には不純物が混じることがあり、素材に含まれるカドミウムや鉛が基準を超える原因になります。色を変えれば配合が変わる。だから色違いは別の品番として試験されます。

洗浄。

使い捨て手袋は、型を原料に浸して引き上げ、そのあと洗浄します。この洗浄が、表面に浮いた未反応の成分を落とす工程です。生産量を上げるために洗浄時間を削ると、表面に成分が残ります。外から見て分かる差ではありません。

ここまでをまとめると、こうなります。

適合しているのは「ニトリル」ではなく、「適切に配合し、十分に洗浄した、その品番の製品」です。だから発注する側が確かめるべき対象も、素材名ではなく品番になります。

ポジティブリスト制度は、ニトリル手袋には適用されない

ここ数年、食品まわりの資材でよく話題にのぼるのがポジティブリスト制度です。手袋の商談でも名前が出ます。ところが、この制度と手袋の関係は、かなり誤解されています。

制度の中身から確かめます。

2018年6月13日に公布された食品衛生法の改正で導入され、2020年6月1日に施行されました。経過措置が置かれ、2025年5月31日で満了しています。現在は完全に施行された状態です。

それまでの規制は、使ってはいけない物質を並べる方式でした。新しい制度は、安全性を確かめた物質だけを使ってよいとする方式です。考え方が反対になりました。

そして、ここが要点です。

この制度の対象は、合成樹脂だけです。

対象となる材質は食品衛生法施行令第1条に定められており、消費者庁の説明では「政令で定める材質(2025年6月1日時点): 合成樹脂」と明記されています。合成樹脂にはプラスチックと熱可塑性エラストマーが含まれます。一方、ニトリルゴムやシリコーンゴムのように熱可塑性を持たない弾性体、つまりゴムは、この制度の対象に入っていません。

材質ごとに整理すると、こうなります。

 

手袋の材質 法律上の区分 ポジティブリスト制度 確かめる根拠
ニトリル ゴム 対象外 告示第370号のゴム製の項の試験
天然ゴム(ラテックス) ゴム 対象外 告示第370号のゴム製の項の試験
ポリ塩化ビニル 合成樹脂 対象 使用物質がリストに載っていること、および合成樹脂製の項の試験
ポリエチレン 合成樹脂 対象 同上
熱可塑性エラストマー 合成樹脂 対象 同上

 

この表が、商談の場で効きます。

ニトリル手袋の商談で「ポジティブリストに対応しています」と言われたとき、それは制度上必要な要件ではありません。間違いだと決めつける必要はありませんが、そこを根拠に価格差を説明されたなら、話が噛み合っていない可能性があります。 ニトリルで確かめるべきは、告示第370号のゴム製の項の試験成績書です。

逆に、ポリエチレン手袋やポリ塩化ビニル手袋を併用している現場では、こちらは制度の対象です。使われている基材と添加剤がリストに収載されていることを、供給元に確認してください。

1つの現場で材質の違う手袋を使い分けているなら、確かめる書類も2種類になります。 ここを混ぜて管理すると、監査で説明が止まります。

なお、この分野の所管は現在消費者庁の食品衛生基準審査課です。以前は厚生労働省が担っていましたが、食品衛生基準の行政は消費者庁へ移りました。古い資料を参照するときは、発表元と時期を見てください。

「食品衛生法適合」という表示に、国の審査は入っていない

ここで、冒頭の結論に戻ります。

箱に印刷された「食品衛生法適合」の文字。このマークや文言そのものに対して、国や所管省庁の事前届出制度も、個別の製品審査もありません。表示は、製造元または輸入販売元による自主的な宣言です。

言い換えると、こうなります。

その表示は「うちの製品は告示第370号の規格基準を満たしています」という主張であって、行政のお墨付きではありません。

ここで誤解しないでいただきたいのは、自主的な宣言だから信用できない、という話ではないことです。

まっとうな製造元は、試験機関に依頼して成績書を取り、それを根拠に表示しています。問題は、根拠を持っている製品と持っていない製品が、箱の上では同じ顔をしていることです。

だから発注する側の仕事は、表示を疑うことではなく、根拠を出してもらうことになります。

そして、この依頼は身構えるようなものではなく、ごく普通のやり取りで済みます。

自社で工場を持っている供給元、あるいは製造元と直接つながっている供給元であれば、試験成績書は手元にあります。求められれば出せます。出すのに時間がかかる、あるいは出せないという反応が返ってきたときは、その供給元がどこまで製造の実態を把握しているかが分かります。

見積もりを依頼するときに、価格と一緒に書類も依頼する。それだけで、供給元の性格がかなり見えます。

適合の根拠になる書類は2種類ある。保証している範囲が違う

供給元から出てくる書類には、大きく2種類あります。名前が似ていて、保証している範囲がまったく違います。

 

書類 発行するのは誰か 何を保証しているか 何を保証していないか
試験成績書 独立した試験機関 持ち込まれた特定のサンプルを、特定の日に、指定の条件で分析した結果の数値 別のロット、別の品番、現在生産中の製品
適合証明書(適合宣言書) 製造元または輸入販売元 指定した品番の製品が、規格に適合した設計と製造管理のもとで作られていること 第三者による検証。工程が無断で変わっていないこと

 

試験成績書は、過去のある一点を写した写真です。

試験機関が保証しているのは、依頼者が持ち込んだサンプルの数値だけです。そのサンプル以外のロットについては、何も述べていません。ここを取り違えると、3年前の成績書1枚で現在の全生産分を担保している気になってしまいます。

適合証明書は、企業としての約束です。

こちらは製品全体に対する包括的な宣言なので、範囲は広くなります。ただし、あくまで自己宣言です。第三者の抜き打ち検査を伴わない限り、製造工程が黙って変わっていないことまでは保証しません。

原料や工場が、コストを下げる目的で変更されることは珍しくありません。変更そのものは悪いことではありませんが、変更されたのに書類が更新されていない状態が問題になります。

だから、この2つは片方だけでは足りません。

試験成績書で「この品番は基準を満たしていた」ことを確かめ、適合証明書で「その品質を継続して管理している」という約束を取る。両方をそろえて、はじめて根拠になります。

なお、供給元が製造元そのものである場合、この2つは同じ相手から出てきます。商社を何段か経由している場合は、書類も同じ数だけ経由します。どこで発行され、誰が現在の管理をしているのか。ここは最初に確かめてください。

書類を受け取ったら、5か所を見る

書類を受け取ってファイルに綴じる。確かめたと言えるのは、その先です。読む場所が決まっています。

 

見る場所 何を確かめるか 引っかかったときの聞き方
試験機関の名前 独立した第三者機関か。供給元の社内検査室ではないか 「どちらの機関で試験されましたか」
試験の年月日 何年前のものか。定期的に取り直しているか 「直近の試験はいつですか。更新の頻度を教えてください」
対象の品番 見積もりに載っている品番と、文字まで一致しているか 「この書類は、今回お見積りいただいた品番のものですか」
試験の条件 試験に使った液(水や酢酸など、食品に見立てたもの)と温度が、自社の使い方を含んでいるか 「油を扱う工程で使いますが、この条件で確かめられますか」
試験項目の数 試験項目の表と照らして、項目が足りているか 「重金属と蒸発残留物の結果も見せていただけますか」

 

3行目の「品番の一致」が、実務でいちばん引っかかります。

同じブランド名でも、色違い、サイズ違い、厚さ違いで品番は分かれます。青の成績書が付いてきて、実際に納品されるのは黒だった、ということが起こります。色が変われば配合が変わるというのは、素材の章で見たとおりです。

4行目の「試験の条件」も見落とされます。

告示の試験では、水や4パーセント酢酸といった食品に見立てた液を使い、条件を決めて溶け出す量を測ります。自社の現場が高温の油を扱っているなら、その使い方が試験の条件に含まれているかを確かめられます。

そして5行目。

試験項目の表を手元に置いて、項目を数えてください。6項目か、7項目か。塩素を含まないゴムなら6項目が正しい姿です。それより少ないなら、除外規定に当たるのか、単に試験していないのかを聞いてください。

ここまでを聞ける供給元かどうかが、そのまま取引の質になります。

第三者の認証があるかどうかで、確かめる手間が変わる

自己宣言に頼るしかないのか、というとそうではありません。業界の側に、第三者が確かめる仕組みがあります。

日本調理用手袋協会が運営する認証制度です。基準を満たした製品にCGマークが付きます。

この協会は2000年に「調理用手袋技術連絡会」として活動を始めた団体です。食品衛生法に準拠した原料と試験方法の規格基準をもとに、それより厳しい自主基準を定めています。そして基準に適合した製品には登録番号を付けて管理し、確認証明書を発行しています。

法律上の適合と、この認証は何が違うのか。整理するとこうなります。

 

見る項目 食品衛生法への適合 第三者認証(CGマーク)
判定するのは誰か 製造元または輸入販売元(自己宣言) 業界団体(第三者)
何を見ているか 試験に通ったサンプルの数値 原材料から製品までの管理
続いているかの確認 供給元の自主管理 登録番号による管理と確認証明書
表示のされ方 文字で「食品衛生法適合」 規定されたマークと登録番号

 

見分け方は、はっきりしています。

箱に文字だけで「食品衛生法適合」と書いてあるなら、それは製造元または輸入販売元による自己宣言です。CGマークと登録番号が印刷されていて、その番号を協会に照会できるなら、第三者が確かめた製品です。

なお、ポリ塩化ビニル製とポリオレフィン製(ポリエチレンなどが含まれます)については、ポジティブリストに掲載された物質を使った製品であることが、この認証の必須要件になっています。材質とポジティブリストの話が、ここでもう一度出てきます。

認証があるかどうかを、仕入先を選ぶときの評価項目に入れる。それだけで、書類を1枚ずつ読む手間はかなり減らせます。

1年に何枚要るのかは、交換の回数から決まる

発注量を前年の実績だけで組んでいると、交換の回数を見直した瞬間に足りなくなります。前年の実績は、現場が交換を我慢していた分もそのまま写しているからです。

まず、法令のほうを見ます。

食品衛生法施行規則の別表第十七は、食品を扱う者の衛生管理として、こう定めています。

> ト 食品等取扱者は、手袋を使用する場合は、原材料等に直接接触する部分が耐水性のある素材のものを原則として使用すること。

そして、交換についてはこう書かれています。

> リ 食品等取扱者は、用便又は生鮮の原材料若しくは加熱前の原材料を取り扱う作業を終えたときは、十分に手指の洗浄及び消毒を行うこと。なお、使い捨て手袋を使用して生鮮の原材料又は加熱前の原材料を取り扱う場合にあつては、作業後に手袋を交換すること。

次に、大量調理施設衛生管理マニュアルです。厚生労働省が食中毒予防のために出しているもので、二次汚染の防止の項に、交換のタイミングが具体的に並んでいます。

> 調理従事者等(食品の盛付け・配膳等、食品に接触する可能性のある者及び臨時職員を含む。以下同じ。)は、次に定める場合には、別添2に従い、必ず流水・石けんによる手洗いによりしっかりと2回(その他の時には丁寧に1回)手指の洗浄及び消毒を行うこと。なお、使い捨て手袋を使用する場合にも、原則として次に定める場合に交換を行うこと。

> ① 作業開始前及び用便後

> ② 汚染作業区域から非汚染作業区域に移動する場合

> ③ 食品に直接触れる作業にあたる直前

> ④ 生の食肉類、魚介類、卵殻等微生物の汚染源となるおそれのある食品等に触れた後、他の食品や器具等に触れる場合

> ⑤ 配膳の前

読み取っていただきたいのは、①から⑤の前に置かれた一文です。

これは手洗いのタイミングを定めた条文で、そこに「使い捨て手袋を使用する場合にも、原則として同じタイミングで交換する」と書かれています。つまり手袋は、手洗いの代わりではありません。手洗いと同じ回数で替えるものとして扱われています。

ここから、発注量の考え方が変わります。

作業者1人が1日1枚、という前提で年間の数量を組んでいるなら、その数量は現場に使い回しを強いています。

数え方は単純です。1人が1日に区切る工程の数を数え、そこに作業開始前と用便後の分を足します。工程が5つあり、用便が1日2回なら、1人1日あたり7枚が下限です。作業者が20人で稼働が月22日なら、月に3,080枚。1箱100枚なら31箱です。

この数字と、いま発注している箱数を並べてみてください。差が開いているなら、現場は替えずに使っています。

衛生管理の水準は、手袋を替えられる枚数が手元にあるかどうかで決まります。発注の担当者が押さえているのは、そこです。

なお、別表第十七には異物混入についての記述もあります。

> ヘ 食品等取扱者は、手洗いの妨げとなる及び異物混入の原因となるおそれのある装飾品等を食品等を取り扱う施設内に持ち込まないこと。

装飾品についての条文ですが、異物混入が規制上の関心事であることが読み取れます。手袋そのものも、破れれば異物になります。強度と、見つけやすい色。この2つが仕様として意味を持つのは、そのためです。破れにくさは厚さで、見つけやすさは色で決まります。どちらも発注の時点で指定できる項目です。

相見積もりが比べられなくなる、6つの要素

ここからは、価格の話に移ります。

複数の供給元から見積もりを取ったのに、どれが安いのか判断できない。この状態は、担当者の力量とは関係なく起こります。そもそも比べられる形で出てきていないからです。

比較を無効にしている要素は、だいたい次の6つです。

 

要素 何が起きるか 確かめ方
入数の単位 1箱100枚と200枚、1ケース10箱と20箱が混ざる。箱単価やケース単価では逆転する 総枚数で割り、1枚あたりの単価に直す
厚さの測定箇所 指先、手のひら、手首で厚さが違う。最も厚い指先の値を全体の厚さとして書ける どの部位を測った値かを聞く
サイズごとの入数 大きいサイズは箱に入りきらず、100枚入りが90枚入りや80枚入りになる サイズごとに枚数と単価を出してもらう
適合の範囲 青だけ試験を受けていて、白と黒は受けていない、ということがある 見積もりに載る全品番の書類を求める
粉の有無 粉なしは工程が1つ増えるので原価が変わる 粉あり・粉なしを指定して見積もる
表面の加工 滑り止めの凹凸は厚さの数値を押し上げる。素材の量は増えていない 加工の有無を指定する

 

2行目の厚さについて、少し補います。

使い捨て手袋は、型を原料に浸して引き上げて作ります。引き上げるとき、重力で原料が指先に寄ります。だから指先がいちばん厚く、手首に向かって薄くなります。これは製法上そうなるもので、不良ではありません。

問題は、この差をどう表記するかです。指先の値を「厚さ0.10ミリ」と書いた製品と、手のひらの値を「厚さ0.07ミリ」と書いた製品は、実物では同じくらいということが起こります。

では、どうすれば揃うのか。

1枚あたりの重さを聞いてください。

同じサイズの手袋1枚が何グラムか。これは測る場所によってぶれません。使われている原料の総量そのものです。重さが分かれば、極端に薄い製品を先に外せます。厚さの表記に振り回されずに済みます。

見積もりを依頼するとき、先に指定しておく項目

比べられる見積もりは、依頼の書き方で作れます。届いた見積もりを並べ替えるより、依頼の時点で条件を揃えるほうが早く終わります。

依頼文に入れておける項目は、次のとおりです。

  • 材質を指定する(ニトリル、または並行して検討している材質を書く)
  • 色とサイズの構成を指定する(青の中サイズを何箱、というところまで書く)
  • 粉の有無を指定する
  • 1枚あたりの単価で回答するよう求める
  • 同じサイズ1枚あたりの重さを併記するよう求める
  • 見積もりに載せた全品番について、試験成績書と適合証明書を添付するよう求める
  • 直近の試験年月日を明記するよう求める
  • 発注から納品までの日数と、最小の発注単位を明記するよう求める

この8項目を最初に書いておくと、返ってくる見積もりは横に並びます。

そして、この依頼文には副産物があります。

どこまで答えられるかで、供給元の位置が分かります。

製造元とつながっている供給元なら、重さも試験成績書も納期も、その場で答えられます。転売を重ねている供給元だと、確認に日数がかかり、項目が埋まらないまま返ってきます。価格が同じなら、答えが早いほうを選べます。

依頼の手間は1回きりです。そのあと何年か続く取引の前提を、ここで決められます。

仕入先を切り替えるとき、書類は作り直しになる

いま使っている手袋の値上げを告げられた、あるいは欠品が続いている。そこで切り替えを検討する。よくある流れです。

このとき見落とされやすいのが、書類が引き継がれないことです。

切り替えると何が変わるか、並べます。

品番が変わる。

試験成績書も適合証明書も、品番に紐づいています。前の供給元からもらった書類は、新しい製品には使えません。取引先の監査を受けている現場では、切り替えのタイミングで書類一式を差し替える必要があります。

現場の手順書に書いた仕様が変わる。

厚さ、色、サイズの表記が変わると、衛生管理の記録に書いた内容とずれます。危害要因分析に基づく衛生管理の手順書を作っている現場では、そこも直すことになります。

作業者の感覚が変わる。

同じ「中サイズ・0.08ミリ」でも、メーカーが違えば装着感は変わります。現場から戻ってくる声は、切り替えたあとに出てきます。

だから、切り替えの検討では順番があります。

1つ目。

候補の書類を先に取り寄せて、必要な項目がそろっているかを確かめる。

2つ目。

見本を取り寄せて、実際の工程で使ってもらう。破れやすさと着けやすさは、使ってみないと分かりません。

3つ目。

そのうえで、数量と納期の条件を詰める。

価格の交渉を最初に置くと、書類が足りていないことに後から気づきます。書類が出ない供給元は、価格がいくら安くても候補から外れます。その判断を先にできれば、比較の対象が減って話が早くなります。

供給が止まったとき、何が起きるか

平時の調達では、価格が最大の論点になります。ところが供給が細ったとき、論点は一気に入れ替わります。

使い捨て手袋の生産は、一部の国と地域に集中しています。原料の産地と、長く産業を育ててきた歴史がそこにあるからです。この構造そのものは効率的ですが、そこが止まったときに代わりがありません。

なお、生産量の内訳については、公表された統計で確かめられる範囲が限られます。ここでは割合の数字を出さず、構造の話にとどめます。

過去に世界的な需要の急増が起きたとき、調達の現場では次のことが起きました。

価格が跳ね上がった。

長期の契約単価が維持されなくなり、その都度の相場で買うことになります。

品質の幅が広がった。

供給が足りない状態では、これまで手袋を作っていなかった作り手が市場に入ってきます。このとき、書類の確かめ方を持っている現場と持っていない現場で、差がはっきり出ます。

現場が止まった。

手袋が確保できなければ、交換のタイミングを守れません。衛生の基準を満たせないという理由で、製造や提供を絞らざるを得なくなります。

ここから引き出せる備えは、2つに絞れます。

仕入先を1つに絞らない。

そして、絞らないというのは「2社から見積もりを取る」ことではありません。2社が同じ工場から仕入れていれば、止まるときは同時に止まります。どこで作られているかまで確かめておけるかどうかが分かれ目になります。

代替品の仕様を先に決めておいてください。

いま使っている品番が入らなくなったとき、何なら代わりになるのか。厚さ、色、サイズ、そして書類。この4点で互換性のある候補を、平時のうちに1つ決めておけます。

有事に探し始めると、選べる立場ではなくなります。

標準品で合わないときは、OEMで作ってもらう方法がある

ここまでは、市場に出ている製品から選ぶ話でした。ただ、現場によっては標準品では合わないことがあります。

たとえば、こういう場面です。

色を分けたい。

工程ごとに手袋の色を変えて、区域の行き来を目で管理したい。ところが必要な色の在庫がない。

長さが足りない。

洗浄の工程で、手首までの長さでは水が入る。腕まで覆う長さが要る。

箱の仕様を変えたい。

現場の取り出し口の向きを変えたい。あるいは、置き場所に合わせて箱の大きさを変えたい。

こうした要望は、OEMという形で応じられる場合があります。使う側が仕様を決めて、作り手にその仕様どおり作ってもらう方法です。別注生産とも呼ばれます。

OEMを検討するときに、先に決めておけることを挙げます。

  • 年間でどれくらい使うか(最小の生産単位に届くかどうかが最初の分かれ目になります)
  • 変えたいのはどこか(色、長さ、厚さ、箱。全部を変えると型から作ることになります)
  • いつまでに要るか(型が要るかどうかで日数が変わります)
  • 食品に触れる用途かどうか(触れるなら、新しい仕様でも試験が必要になります)

最後の項目が、この記事の話とつながります。仕様を変えれば、試験も取り直しになります。色を変えるだけでも配合が変わるからです。OEMを相談するときは、書類をどうするかも同じ場で決めてください。

なお、標準品で足りるなら標準品のほうが早く、安く済みます。OEMは、標準品を一通り見たうえで、それでも合わないときの選択肢です。

厚さとサイズは、作業の内容から決める

書類の話が続いたので、仕様のほうにも触れておきます。発注のたびに迷いやすいのが厚さとサイズです。

先にお伝えしておきたいことがあります。厚さの区分に、公的な基準はありません。「薄手」「中厚手」「厚手」という呼び方は、作り手と売り手が便宜的に使っているものです。だから同じ「厚手」でも、数値は各社で違います。呼び名ではなく数値で指定してください。

そのうえで、厚さで何が変わるかを整理します。

 

厚さの目安 変わること 向いている作業
0.05ミリ以下 指先の感覚が残る。破れやすい。1枚あたりの単価は下がる 盛り付け、包装、検品など、交換の回数が多く力のかからない作業
0.06〜0.11ミリ 感覚と強さの釣り合いが取れる。単価は中位。もっとも選ばれる範囲 調理、仕込み、介助など、時間の長い作業
0.12ミリ以上 破れにくい。油と薬品に触れる時間が長くても持つ。単価は上がる 洗浄、清掃、整備など、器具や薬品を扱う作業

 

判断のしかたは、単純です。

交換の回数が多い作業なら薄く、1枚を長く使う作業なら厚く。

薄い手袋は単価が安いので一見お得に見えます。ところが破れやすい作業に薄手を入れると、破れるたびに交換することになり、結局枚数が増えます。しかも破れた破片が製品に入る経路にもなります。

逆に、盛り付けのように何十回も交換する工程に厚手を入れると、単価がそのまま費用に効いてきます。工程ごとに厚さを分けられるなら、そのほうが総額は下がります。

次にサイズです。

サイズが合っていない手袋は、2つの問題を起こします。

大きすぎる場合。

指先が余って作業がしにくく、器具に引っかかって破れます。着脱のたびに手間もかかります。

小さすぎる場合。

引っ張られた状態になるので、同じ厚さでも破れやすくなります。長時間の着用で手が疲れます。

サイズは手のひらの周囲の長さで決まります。同じ人でも作り手が違えば合うサイズは変わります。だから切り替えのときは、見本を取り寄せて実際に着けてもらうのが確実です。

そして、現場では複数のサイズを置くことになります。作業者の手の大きさは揃わないからです。サイズ展開が細かい製品を選んでおくと、合わないサイズを我慢して使う人が減ります。

なお、サイズごとに1箱の入数が変わることがあります。相見積もりの章で触れたとおり、大きいサイズは箱に入りきらないためです。見積もりを取るときは、サイズごとに枚数と単価を出してもらってください。

業種によって、確かめる順番が変わる

同じニトリル手袋でも、使う現場によって優先する項目は入れ替わります。自社がどこに当たるかで、確認の順番を決められます。

 

現場 最初に確かめる項目 理由
食品工場 適合の書類、品番の一致、色 取引先の監査で書類を求められる。破片の混入を見つけやすい色が要る
介護施設 装着のしやすさ、サイズ展開、供給の安定 交換の回数が多く、着脱の速さが業務量に直結する。使う枚数が多いぶん、切らさないことも条件になる
入浴施設 厚さ、薬品への強さ 清掃で洗剤に触れる時間が長い
自動車整備 厚さ、油への強さ、破れにくさ 油と工具を扱うため、薄手では持たない

 

食品工場の場合。

書類が先です。取引先から監査を受ける立場にあるなら、価格の比較より前に、書類が出るかどうかで候補が絞られます。そして色。破れた破片が製品に混ざったとき、食品にない色であれば見つけられます。

介護施設の場合。

1日の交換回数が多いので、着脱の手間がそのまま業務時間になります。サイズが合っていない手袋は、着けるのに時間がかかり、破れやすくもなります。サイズの展開が細かい製品を選べます。

入浴施設の場合。

清掃で洗剤や薬品に触れる時間が長くなります。ニトリルは油と薬品に比較的強い素材ですが、それでも薄手では持ちません。厚さの選択肢がある供給元を選べます。

自動車整備の場合。

食品には触れないので、食品衛生法の適合は必須ではありません。優先するのは油への強さと破れにくさです。ただし、同じ現場で食品を扱う工程がある場合は話が変わります。食品を扱う側だけは、適合した品番に分けてください。

自社がどれに当たるかで、供給元へ最初に投げる質問が決まります。

よくあるご質問

ニトリル手袋は食品衛生法に適合していますか。

素材がニトリルであることと、食品衛生法に適合していることは別の話です。適合しているかどうかは製品ごとに決まります。告示第370号のゴム製の器具の項に定められた試験を、その品番が通っているかで判断できます。確かめる方法は、供給元に試験成績書を求めることです。

食品衛生法に適合していないニトリル手袋はありますか。

あります。同じニトリルゴムを主原料にしていても、配合された添加剤が残っていたり、製造工程の洗浄が足りなかったりすると、溶出試験の基準を超えます。また、食品用として試験を受けていない品番も市場にあります。作業用として販売されている製品を食品に流用すると、この状態になります。

ニトリル手袋の医療用と食品用は、何が違いますか。

根拠となる法令の枠組みが違います。食品用は食品衛生法の器具としての基準で判断され、医療用は別の制度で扱われます。両方の表示を持つ製品もあります。確かめていただきたいのは、自社の用途に対応した書類が出るかどうかです。医療用の書類があっても、食品用の根拠にはなりません。

食品を扱う仕事で、手袋の着用は義務ですか。

食品衛生法施行規則の別表第十七は、手袋の着用そのものを一律に義務づけてはいません。定めているのは、手袋を使う場合の条件です。原材料に直接触れる部分は耐水性のある素材を原則とすること、そして生鮮の原材料や加熱前の原材料を扱ったあとは交換すること。この2点が書かれています。

ニトリル手袋は作業用として使えますか。

使えます。ニトリルは油と薬品に比較的強く、破れにくい素材なので、整備や清掃の現場でも広く使われています。ただし、作業用として売られている製品が食品衛生法に適合しているとは限りません。食品に触れる工程で使うなら、食品用として試験を受けた品番を選んでください。

食品を扱う現場で、青い手袋がよく使われるのはなぜですか。

破れた破片が製品に混ざったとき、見つけやすいからです。食品には自然に存在しにくい色なので、目で見たときに気づきやすくなります。なお、色を変えると配合が変わるため、色ごとに試験を受けている必要があります。青は適合していて黒は未試験、ということが起こります。

使い捨て手袋は、どのタイミングで交換しますか。

大量調理施設衛生管理マニュアルは、手洗いをするタイミングと同じ場面での交換を求めています。作業開始前と用便後、汚染作業区域から非汚染作業区域へ移るとき、食品に直接触れる作業の直前、生の食肉類や魚介類などに触れたあと他の食品や器具に触れるとき、そして配膳の前。この5つが挙げられています。

食品衛生法適合の証明書は、どこでもらえますか。

供給元に依頼してください。試験成績書は独立した試験機関が発行し、適合証明書は製造元または輸入販売元が発行します。自社で工場を持っている供給元であれば、どちらも手元にあることが多く、依頼すれば出てきます。商社を何段か経由している場合は、発行元まで遡る必要があるため、日数がかかります。

手袋をしていれば、手洗いは省けますか。

省けません。大量調理施設衛生管理マニュアルは、手洗いのタイミングを定めたうえで、使い捨て手袋を使う場合も原則として同じタイミングで交換するよう求めています。手袋は手洗いの代わりではなく、手洗いと同じ回数で替えるものとして扱われています。着けたままの手袋は、素手と同じように汚れを運びます。交換の回数を確保できる枚数を用意しておくことが、衛生管理の前提になります。

厚さが同じなのに価格が違うのはなぜですか。

厚さの表記が同じでも、測った場所が違うことがあります。手袋は型に浸して作るため指先が厚くなり、指先の値を表記した製品と手のひらの値を表記した製品では、実物の量が変わります。比べるときは、同じサイズ1枚あたりの重さを聞いてください。原料の量そのものなので、測る場所によってぶれません。

まとめ

長くなったので、確かめる順番だけ整理します。

1つ目。

その手袋の材質を確かめる。ゴムか、合成樹脂か。適用される条文が変わります。

2つ目。

試験成績書を求める。試験機関の名前、試験の年月日、品番、試験の条件、項目の数。この5か所を読みます。

3つ目。

適合証明書を求める。継続して管理されているかは、こちらで確かめます。

なお、この2つより先にできることがあります。箱にCGマークと登録番号があるかを見る。あれば、書類を1枚ずつ読む手間はかなり減ります。

4つ目。

見積もりは1枚あたりの単価と、1枚あたりの重さで比べる。厚さの表記では揃いません。

「食品衛生法適合」という表示は、発注する側にとって出発点です。終点ではありません。根拠を出してもらうところまでが、選定です。

そして、その根拠を出せるかどうかは、供給元が製造の実態をどこまで把握しているかで決まります。見積もりを依頼するときに書類も一緒に頼む。それだけで、候補はかなり絞れます。

弊社が取り扱っているニトリル手袋の厚さと色の展開は、ニトリル手袋の取り扱いページにまとめています。

現在お使いの手袋について、書類が出てこない、値上げの説明に納得がいかない、必要な仕様が見つからない。そういった状況でしたら、状況をそのままお書きいただければ、こちらで確かめてご返答します。標準品で合うのか、OEMで作るほうが早いのかも、あわせてお伝えできます。

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